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Lucky Find in NY!
超個人的なニューヨークのみつけもの$ $ $ |
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●おしゃれなゴム長 |
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| 関東地方にも早々に雪が降ったようだが、その数日前、NYにも初雪がおとずれた。人生・半隠居状態にある私は、
「ああ、このままどんどん雪が降り積もって、交通がストップして会社にいけなくなったらどうしましょ。今日は大事なクライアントとの会議があるのに」
などという、職への使命感にみちた状況におちいるべくもない。ただあたたかな部屋から窓の外を見て、
「もっと積もればいいねぇ。セントラルパークの雪景色もおつなもんさねぇ」
などと心でつぶやくばかりである。
外は雪が舞いつもり、いつもは賑やかなソーホーの通りを見る間に真っ白に染めていく。しかし。しかし、である。なごやかな雪景色を眺めるたび、私は激しい後悔におそわれる。それは、「ああ、まだ今年も買ってないよ、長靴……」という単純かつ現実的な問題に、起因しているのだった。
やはりNYの雪道を歩くには、長靴がほしい。いや便宜上、長靴といっているだけで、それほど長くなくてもいい。要は、ソールから上数センチ部分がゴムになった、ゴムブーツが欲しいのだ。
ご存知のように訴訟社会アメリカ、雪道のお手入れ(というのかな)は比較的丁寧になされているといっていい。誰かが自分の店の前で滑って怪我でもしたら、「アンタが店の前をきちんと掃除してなかったからだ」とばかりに訴えられてしまうからだ。
ときには、市を相手に訴えちゃうつわものもいるわけで、とにかく歩道の雪処理は雪の日には必要以上にかかせない仕事となっている。ただ困るのが凍結防止用の塩である。
ええい、凍らせてなるものか! とばかりやたら撒かれるのだが、これが革靴にはなかなか厄介なものなのだ。革が白っぽくガビカビになってしまい、なかなか落ちやしない。雪の日にスノウブーツを履く人が多いのは、溶けかけてどろどろになった雪にくわえ、この塩から靴を守るためなのだった。東京では、いまどき長靴を履いて会社や学校に行く人も珍しいだろうが、そこは人目を気にせぬニューヨーカー。服装と共に足元も思いきり自由なのが嬉しい。
そこで毎年気になっているのが、アウトドアっぽい短めのスノウブーツ。靴紐で調節しやすいし、色もカーキやブラウンとあわせやすいのがいい。このところ人気でダウンタウンのあちこちに支店を出している靴屋、David Zに行けば、何足も揃っているはずだ。
ただし今年はこれに対抗馬、ならぬ対抗ブーツがあれこれ登場。こちらはショートのアウトドア系とは違い、本物の「ゴム長」系ルックスである。早速この前の雪の日には、真っ黒のブーツを履いたおしゃれな女の子をみかけた。これがカボカボの幅広サイズなら、お父さんのゴム長を借りてきました風の垢抜けない状態になってしまう。が、ふくらはぎにぴったり沿う細身なデザインなので、60年代のエナメルブーツっぽくてとてもしゃれている。
これまた気になっているのが、雑誌でみかけたThomas Pink のゴムブーツ。ウェリントンチェックの地にトリミングとソールはピンク色。前面についた「PINK」のロゴも愛らしい。真っ黒なフェイクファーのコートにタートルセーター、タータンのミニにこのブーツをあわせたら、ロンドンのスクールキッズみたいで可愛いに違いない。まぁ私の年でスクールキッズもないもんだが、いや気になるよこのブーツ。
……と毎年こんな調子でひと冬中、虎視眈々とゴム長チェックを続ける私。迷いすぎてきまらないよ。そして雪が降るたび「しまった、まだ買ってない」と舌うちし、部屋の中から恨めしげに外を眺めるのである。お気に入りのゴム長履いて、マイケル・キートンの映画「ジャック・フロスト」よろしくおっきな雪だるまをつくりたいのに……。
こうなったら潔く、永遠の定番アイテムお父さんゴム長にでもするしかないかもしれぬ。そこにアクリル絵の具でお花や、雪の結晶なんかペイントしてもいいかもね。と、雪の日妄想はひろがるばかりである。
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●David Z / 556 Broadway, New York, NY / (212) 431-5450
●Thomas Pink / 520 Madison Ave, New York, NY / (212) 838-1928
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●ドラッグストア・パラダイス |
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風邪をひいてしまった。今これを書いてるのは、クリスマス明けである。
この華やかなホリデーシーズンに、げほげほ咳込む声はホラー映画状態。NYのアパートメントは完全暖房のはずなのに、今いち暖房の効きが悪いため毛羽立った毛布にくるまり、冷蔵庫に食べるものがないので冷凍ゴハンと納豆なんか食べながら、原稿を書いている。
……という日本人女子は、はたしてNYにいかほどいるのであろうか。いやこれは勘なんだけどね。結構いる気がするな。異国の地で病に伏し、冷凍の日本食なんて食べながら、週に一度の日本ドラマを心待ちにする自由業のオンナ(独身、貯蓄僅少)。私の勘では、全米非移民者の推定6%くらいいるはずである。
まぁ、そんな適当な統計はおいといて。
こちらで医者に行くたびに驚くことがある。それは、処方薬でなく「あ、そこら辺のドラッグストアでね、○△(有名な鎮痛薬や風邪薬)買うといいよ、意外に効くから」と指示されることが、ままあるということだ。
ちなみに私の喉痛は検査の結果、バクリテアではなくウィルス。ということは、医師の処方が必要な抗生物質は効かず、「その辺の薬局で売っている風邪薬」が効果的、だそうで。病院で、細菌の講義を受けるとは思わんかったわい。
ちなみにこれは、ひとえにアメリカの健康保険事情が悪い、ということにも起因するのだろう。国民健康保険という制度がないから、会社で保険をサポートしてくれないかぎり、民間保険はバカ高い→会社員でもないかぎり、保険はもてず、よって病院に行きにくい→自然に市販薬の開発が進む……といった図式があるようだ。結果、日本では医師の処方がないと買えない強い成分の薬も、結構、手に入る。いわく、ハゲ薬(日本の友人に何度買ってきて!と頼まれたことか)や花粉症の薬。ビタミンやサプルメントの類も安いし、驚くほど種類がある。
NY土産に何を買おうか悩んでいる友人には、だからかならずドラッグストアを覗くことをおすすめしている。薬は個人差もあるゆえ、そうそうお土産にどうぞ、というわけにはいかないが、他にも多くのチョイスはある。私が好きなのは、豊富なデザインのピルケース。曜日ごとに分かれたカラフルなものや、大ぶりのボトル状で「こ、こんなに毎日クスリ飲むんすか?」といった健康マニア向けのもの。錠剤を半分に砕いたり、粉末にして飲み物に混ぜるための、便利で不思議なツール類も充実している。
化粧品からなぜか豊富なスナック菓子。電子レンジ用ポップコーン。老眼鏡に旅行用スリッパ。ハロウィンにはカボチャの雑貨、イースターにはウサギのチョコが棚に並ぶ。なんだかドラッグストアというより、何があるか予想のつかないジャンクストアの趣だな。
マンハッタンのメインはCVSストアとDuan Readeチェーン。他に、ファンキーなコスメやヘアケア・グッズがそろうRicky'sチェーンも見逃せない。ここはなぜか扮装グッズがお好きなようだ。入り口付近にはヘアウィッグやグロテスクな怪物マスクといった代物がそろっているのも疑問だし、だいたい店員のルックスからして派手なのだ。また風邪ひきさんの私としては、ウォルマートの安売りフリース毛布&防寒スリッパも気になっている。
日本に帰国したおり、私が真っ先に飛び込むのがドラッグストア。NYでも、もっとも行く頻度の高い店かもしれない。しかも行くと必ず発見があるのが面白い。日常に寄り添っているようで、はずれているものも多い。ああ、これが他の人には「日常」なんだな、と想像するもまた愉し。
ちなみに今の時期、ストアの棚を飾るのは、半額セールのクリスマス・グッズ。いくら半額だからって。だれが買うんだろう、クリスマス後のツリーのオーナメントなんて。あ、言ってて、ものさびしくなってきた。
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●Duane Reade / 305 Broadway New York NY / (212) 227-6168
●CVS Pharmacy / 158 Bleecker St New York NY (212) 982-3369
●Ricky's / 590 Broadway New York, NY / (212) 226-5552
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●さらばなじみの古着店 |
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このところの不景気の波のせいか、NYの街から多くの店が消えていっている。その後にお目見えするのはたいてい、ドラッグストアやスターバックスなどの大手チェーン、高級ブランド店といったところだ。
だがドラッグストアは狭い区域にそうたくさんあっても仕方ない。どこの店にも大抵同じものがおいてあるし、「あら、この店にはこんなに珍しい笹の葉シャンプーが!(今、突然思いついのだが、なんだ、笹の葉って…)これは買いよ!」といった「めっけもの見つけた」的愉悦に浸ることもすくない。せいぜい、アッチの店ではトイレットペーパーが20¢安かった、という程度の小市民的、ハッキリ言っておばさん的愉悦くらいのものである(まぁこの悦びは悦びで、捨てがたいのだが)。
だが、「めっけもの」的悦びに勝るものはないのじゃないだろうか。自分だけがみつけだすオリジナルの価値。チェーン店的傾向が街にはびこるほどに、この悦びは減っていく傾向にある。誰もがバナリパやGAPの服を身につければ、「このタートルネックはめっけものだわね」と言っても、たぶんアメリカ国内に同じことを思う人が数百人はいるはずだ。そんな私も実は、Jクルーもクラブモナコも好きだが、古着も好きなのである。
だから、馴染みの古着屋さんが街角から次々消えていく現状には、心淋しいものがある。去年は、名も覚えていないグリニッチヴィレッジの小さな古着屋さんや、有名なアンティーク・ブティックが閉店してしまった。そして!この1月なかばには、遂にキャナル・ジーンがクローズする。キャナル・ジーンといえば、ダウンタウン・ブロードウェイの名物。古着も新しいストリートファッションも一緒くたに並ぶメガストアで、辺りを歩く人々が手にするロゴ入りの黒白チェッカーのショッピングバッグが目印だった。
思えば、私が最初にNYで入った古着屋もここであった。まだNYに移り住む前のこと。当時、音楽ライターをやっていた私は、ある日本のバンドのお供で他のライターの方々と共にNYに取材にきたのだった。スタッフ内で長老(!)ともいうべきNY通の評論家、T氏が連れて行ってくれたのが、この店だった。NYの古着、と聞いて胸が躍った。きっと選び抜かれたセンスのいいアンティークドレスや靴などが置かれているのだろう。
しかし。広々とした店内を一瞥して気づいたのは、どちらかというとここはアンティークショップというより、単なる古着屋という事実だった。それも相当のボロからダサい服までごちゃまぜのてんこもり、雑然とした店構えだ。巨大なカートにうず高く積まれた軍払い下げの服や縫い目のほつれたTシャツ。古いを通り越して「きちゃない」と言いたくなる着古しジャンクの山。ううむ、これは…と私は唸った。
一見して、ほしいものがなし! しかしせっかく来たからには何か書いたいし、連れてきてくれた評論家にも申し訳ない。仕方なく帽子を何点か見繕ったのだった。結局そのとき買った黒のカウボーイハット(!)は一度も被らずに、ミュージシャンの友人にあげてしまった。
あの日から何度、足を運んだことだろう。そのうち私は、だだっ広い店内でめっけものを見つけるコツのごときものを学んだ。ファーの衿がついたコートやデッドストックのシャツ、新しいストリートブランドの服も手に入れた。そう、この店は「自分でほしいものをなんとか(しかも安い値段で)見出す術」を教えてくれたのだった。
日本の洒落たヴィンテージショップのように、店長がアメリカまで出向いて手に入れた「選りすぐり品」のみが置かれる親切さなど微塵もない。考えてみれば、置いてあるものと反比例して贅沢なつくりなのである。
ちなみに店の跡地はブルーミング・デールズになるという噂だ。近所にデパート!それはそれで嬉しいが、ダウンタウンが五番街化してしまうかのような戸惑いもある。
しかしまだ好きなアンティーク/古着店も残ってはいる。ほぼキャナル・ジーンの向かいにあるアリス・アンダーグラウンド。こちらはオーナーがセンスいい古着のドレスを集めたStella DallasやResurrection。訊けば、ブルックリンには巨大な古着の倉庫めいた店もあるという。「宝探し」を楽しむため今度は川を渡り出かけようか、と思うこの頃だ。
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●Alice Underground / 481 Broadway New York NY/ (212) 431-9067
●Stella Dallas / 218 Thompson St New York NY / (212) 674-0447
●Resurrection / 217 Mott St New York NY / (212) 625-1374
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●コートを脱げばそこには |
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| 寒い。イッツ・ベリー・コールド。しばれるねえ。
このところのNYはどうしちゃったの?というくらいの厳寒だ。ちなみに今日は華氏15度。摂氏に慣れている私には、それが正確にはどのくらいの気温なのかわからない。ええと、華氏32度が摂氏0度だから…。ああ、おそろしくて計算する気にもなれないよ。
ちなみに街は華やかなホリデーシーズンもひと段落して、いまやセール・シーズン。どの店にも「SALE」の文字が神々しくひしめいている。できれば普段、恐れ多くて手が出ないブランドのサンプル・セールでもひやかしに行きたいところだが。
こう寒くては、おしゃれする気にもなれないというのが本音なのである。事実、街行く人はみな、ダウンコートに襟巻き、手袋。木枯らしのなか、寝袋のごとき布の層に身をくるんだ人々がいきかう地味な様相である。私も、友人たちから「ダサい」「エスキモーのようだ」と悪評相次ぐカーキのダウンコートを手放せない。ここ数年着ることもなく、今年こそは捨てようと思っていたものをとうとう引っ張りだしてしまったのだ。
大人用のブランドは丈や袖が長すぎるものがほとんどなので、チャイナタウンの商店(そんな感じの店構えなのだ)で数年前にみつけた子供用だ。サイズはあうが、デザインがどうもいけない。袖や胸元に意味不明なワッペンがついていたり、渋いカーキでまとめればストリートっぽくていいものを、余計なヒモ(しかも真っ赤なストッパーつき)がついていたりする。だが仕方ない。エスキモーと言われようが歩くスリーピングバッグと笑われようが、誰も寒さには勝てまい。
大体、他人の格好に関心を抱くような余裕は街行く人には皆無だ。早足で誰もが歩きさるのみ。ここってソーホーだよね?おしゃれな(と言われる)街角だよね?と首をかしげたくなるような格好で、誰もが歩いてる。寒さは人間をとことん投げやりかつ他人に寛大にするようである。
そんな現状でも、こ洒落たバーに行けば、驚くような格好をしている女の子に出逢うこともままある。彼女たちは、黒のタンクトップやノースリーブのドレスで、カクテルグラスなど傾けているのだ。いくら暖房が効いているといっても外は零下。こんな寒々しい季節だからこそ、優雅でいようという心意気なのか、東洋人ほど気温に敏感でないアメリカ人(私や寒がりの友人たちは、彼らを肌音痴!とよんでいる)体質がなせるわざか。謎である。うらやましい気もするが、絶対試すことはないだろうなぁ。
そんな風に身のまわりに投げやりだと、不景気に追い討ちをかけるかのごとく必然的に購買意欲も失せてくる。が、ひとつだけ闘志を燃やしてでも手に入れたいものはある。むろん防寒ウェアだ。
訊けば、サイズのあうダウンコートを手に入れるには、ブランドショップではなく、デパートが一押しらしい。なるほど。ブルーミング・デールズあたりに出向けば、ワンフロアまるごと色々なメーカーのダウンが揃っているのだから、店をまわる手間も省けるというものだ。ああ、しかしこう寒いと地下鉄に乗って出かける気もしないよ。温かい服がないと出かけられないし。……堂々めぐりである。
こうして人間が世間様から遠ざかっていくのね。
もう一つのねらい目はアウトドアショップ。実は、ここ数年「ダイアナ妃も着ていた」が謳い文句の(笑)ダマールというブランドの防寒サーマル肌着を愛用していたのだが。なんとこのご時世、ダマールショップはアメリカ市場を撤退してしまったのだ。ああ、あのあったか肌着なしで、これからどう暮らせというの!と悲嘆に暮れていたら、ウィンタースポーツに興じる友人たちがあれこれ教えてくれた。
早速パタゴニアやパラゴンといったショップを覗くと、これが結構揃っている。L.L.Beanのカタログオーダーという手も残されている。あくまでアウトドアっぽい簡素なデザインに多少の不満は残るものの、背に腹はかえられぬよのう。こうして、私はバーで見かけたおしゃれな女性たちからますます遠ざかっているのである。なんたって「厚手のコートを脱げば、シルキーなドレス」どころか「エスキモー服、脱げばそこにもまた色気度ゼロのアウトドア肌着」だもの。
世の極寒地の女性たちは、この問題にどう対処しているのだろうか。訊ねたい気がしつつ、アウトドアショップ通いに余念のない今日この頃である。 |
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●Patagonia / 101 Wooster Street, New York / (212) 343-1776
●Paragon / 867 Broadway New York NY / (212) 255-8036
●L.L.Bean Online Shop / http://www.llbean.com
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