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Lucky Find in NY!
超個人的なニューヨークのみつけもの$ $ $ |
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●いのちの球体 |
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| 久々に、自然史博物館のローズ・センターに出向いた。改築されたヘイデン・プラネタリウムのスペース・ショウを観るためだ。
現在、催されているショウのお題目は「The Search for Life: Are We Alone?」。
プラネタリウムほどロマンティックな場所はないけれど、とりわけこれほど壮大な浪漫をくすぐられるテーマはないだろう。
地球にこれだけの生命が宿っているのだ。宇宙のどこか他の場所にもかならず、いのちが存在するはずだ。そのことを、想像だけでなく、しごく論理的で科学的なアプローチと、息をもつかせぬバーチャル・リアリティな体感映像で教えてくれる場所である。
うわぁ。ほう。と心で何度もため息をつきつつ。万一ロット(宝くじ)でも当たって億万長者になった暁にゃ、宇宙に旅して事実を絶対この目で確かめるぞ!
そんな決意を固めたひとときであった。
ちなみにナレーションはハリソン・フォード。銀河系や太陽系に思いを馳せつつも、生真面目に宇宙を「語る」ハリウッドスターのお顔がつい脳裏をよぎってしまう。なんとも微妙な後味のおまけつきである。
さて、スペース・ショウもいいが、ローズ・センターに来ると、かならず長いこと足をとめる場所がある。ふきぬけの清潔で無機的な建物のロビー。天井からの明るい陽射しをうけ、ひっそり輝くガラスの球体がそれだ。
直径1メートルはあろうかというガラス玉の中身は、水。
水中には網目をはりめぐらせたような繊細な海草と、隙間をぬって愛らしい無数の小さなエビたちが泳いでいる(いわゆる釣り餌のオキアミのような生物。
いや、本当にオキアミかも知れない)。
つまりこの巨大なスノウボールのごときガラスの内側に、太陽光と空気との完璧なバランスを保つ生物圏が完成されているわけだ。英語でいうところのBiosphereである。
人々はかならずこの透明な玉の前で佇み、じっと中を覗きこむ。
幼いころから「箱庭」つまりジオラマの感覚に惹かれつづけてきた私は、目の前で完結する生物体系を、驚きと畏怖の思いで見入ってしまう。
両手で抱きしめられるおおきさの中に「宇宙」があるなんて。なんと奇妙なことだろう。そしてまた、同様の感覚でもって地球を抱きしめている「誰か」がいるかもしれないのだ。
うっとりじっくりと、エビたちのどこかひょうきんな動きを監察しつつ、天球妄想はひろがるばかり。
後ろ髪をひかれつつ球体の前から離れたあとは、お土産ショップに直行する。ここには、ミニチュア版のBiosphereが売られているのだ。
大きさは三種類あって、直径7,8cmのものから20cmくらいのものまで。値段は気軽に買うには結構お高く、小さなものでも$50前後、大きなものだと$200はする。
球体のいのちを買うと思うと、その値が安いのか高いのかはわからないのだが。とにかく今日こそは買うぞ!という気持ちになった後、やはり決心がつかずに、すごすごとショップを後にする。
理由は、というと。まずエビが少ない!(って、魚屋さんでゴネてる人みたいだな)ガラスの中にニ、三匹しかいないのだ。こんなに少ない数では、ふとした拍子に命を絶やしてしまったた際に、忽然と哀しみにくれるに違いない。生命体系をみずからの手で壊してしまう恐怖から買えないのである。友人たちには、考えすぎだと笑われるのだけれど。
このショップには、他にもたくさんの洒落た宇宙グッズが揃っている。スペースシャトルを描いたマグもポップで可愛いし、Tシャツはどれも気のきいたデザインだ。
先日、知り合いのいつも「冴えない」格好をしたコンピュータ・ギーク(つまりオタクね)の男の子が、よれよれのパンツに宇宙図を描いた紺のTシャツを着ていた。それ、格好いいね。そう誉めると、彼は誇らしげな顔でこう答えたのだった。「ローズ・センターで買ったんだ」確かに、「I Love NY」のTシャツを買うより、ずっと気のきいたお土産になると思うなぁ。
プラネタリウムのスペース・ショウを堪能した翌週は、映画館のIMAXシアターで3D映画「スペース・ステーション」を愉しんだ。
IMAXシアター初の3D宇宙映像である。NASAやロシアの宇宙研究所の協力を得てつくられた3D映像は、すべて実写である。専用のヘッドセットをつけて観る画面は驚くほど立体的。あの若田光一さんもスペースシャトル内のすぐ間近から語りかけてきたりして! 自分がシャトルのハッチを開け宇宙に出て行くかのごとき感覚や、愉快な無重力状態(水もポップコーンも空中で踊ってる)も存分に味わえる。はたまた「うわぁ」「ほう」の連続なのだった。ちなみにこの映画もナレーションはトム・クルーズ。宇宙もハリウッドスターがお好きなようで。
マンハッタン島というこの場所も、私には独特な宇宙的ジオラマをにおわせる。インディアンから買い上げたちいさな島の上に展開する、ありとあらゆる異人種たちの世界観。島のうえでみる宇宙の夢。
私たちもまた、宇宙からみればちっちゃなオキアミみたいな存在かもなぁ。そんなことを思うと、情けないやら、しんとした心もちになるやら。
自然史博物館の帰り道。澄んだ秋空を見あげながら、ふいに地球という球体のうえに立ちすくむ自分を感じる。そんな不思議な一日だった。
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●American Museum of Natural History--The Rose Center for Earth and Space Heyden Planetarium /
Central Park West at 79th St, New York, NY / (212) 769-5100 http://www.amnh.org
●Lowes IMAX Theatre at Loews Lincoln Square / Broadway and 68th St, New York, NY / (212) 336-5000) http://www.enjoytheshow.com/imax
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●クールなキッズを目指すには!? |
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| 先日、甥っ子の誕生日ギフトを買いに行くという友人に付き合い、とある店を覗いた。555 Soulと書いて、トリプルファイブソウル。そしてNYCE。
友人の甥は十四歳の男の子。
バーモント州の片田舎に住み、サッカーと、冬はスノーボードに励む彼いわく、「これらの服ならまぁなんでもクール」だそう。
叔父としては、こんなにらくちんなギフト選びもないだろう。限られた店の限られたラインの中から、季節にあったTシャツやらパーカを選び、包んでもらえばいいのだから。
して、久しぶりにこういった店をぐるり一瞥した私の感想。ちぇー、いいなぁ、可愛いじゃん、である。なぜ「ちぇ」なのかといえば。私がそれらの服を卒業してしまった年にあるからに他ならぬ。
ちょっとレトロでヒップなロゴのついたミニTシャツ。ラインの入ったトレーニングパンツ。ベロアのパーカにジーンズのミニスカ。元気でやんちゃなアイテムは風の通りがよさそうだ。こういったスケーター・ブランド、ストリート・ブランドは、アメリカでは基本的にキッズのものだ。もしくはキッズでいたいアダルト。
大人も中学生もひっくるめ(まぁどこまでが大人かの論争はおいといて)ドレッドロックスでブラックキッズぽい格好をしていたりする日本とは、ファッションの捉え方が違う。ずるずる通りをひきずる超バギーなパンツを履くのは、この国じゃティーネイジャーばかりである(正直な話、あれはかなり不潔だと思うのだが、室内で靴を履く国の人種とてまた感覚も違うのかしらん)。
大人はいつしか、自由な風の吹き抜ける服より、風をはねつける服を選びだす。
そういえばNYにきた当初は、私もストューシーやUNION、アンティークブティックといった少々ラディカルなお店をしょっちゅう覗いていたっけ。ヒップホップをヘッドフォンで聞きつつ服選びをする男の子女の子でにぎわう場所は、
トラッドなチェーンブランド店よりずっと居心地がよかったのだ。
それがいわゆる「安全圏」のJクルーやZARA、バナリパのセールをチェックするようになったのはいつ頃からか。半袖長袖のTシャツの重ね着よりは、黒のクルーネックのニットを選んでる。哀しいかな人間年と共に変化するもので。いつしかだいすきなアンティークブティックも閉店してしまった。
久々に昔通った店を覗くと、ちょっと粗野な服の着方をして、街角に座りこんでいたあの頃の気もちが、ふいに蘇ってくる。
甥っ子と共にスノーボードを愉しむ友人に付き合い、別のスケーターファッションの店を覗いた。するとカラフルなボードの横にはやはり555 SoulやX-LARGE、ストューシーの洋服が。店の壁にはすでに今年の降雪情報。どこか仲間意識の漂う店内だ。
まてよ、と私は思う。ティーンじゃなくてもスノボやスケボをやる人間は、こういったファッションを気楽に着こなしてるわけよね。ということは、私もボードに挑戦すれば、躊躇なくこれらの服に手を出せるってわけで。理由のあるやんちゃ服なら怖いものなしだ。しかぁし。限りなくスポーツ音痴の私が、雪の中で悲惨な目にあう図も容易に想像できるのである。怖くて、今さら手を出せないよ、スノボもスキーもスケートボードも。
スノーボードというれっきとした理由を前に、シュープリームスがプリントされたピタTを着るかどうか、思惑にくれるオトナの女。
ああ、もののわかったオトナのふりするのって、なんだかつらいね。
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●555 Soul/ 290 Lafayette St, New York, NY / (212) 431-2404
●Stussy / 140 Wooster St, New York, NY / (212) 274-8855
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●至福の贈りもの |
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十一月も後半になってくると、アメリカの街並はどこもかしこも「さぁさぁ、アナタは誰に何を贈る!?」というギフト・モード満載である。
店先のショーウィンドウはむろんのこと、カタログショッピングも雑誌も、こぞってギフト特集。
こちらのクリスマスは、日本のように「大好き恋人に高価なプレゼントを」というロマンティックな日ではない。誰もが家族親戚恋人友人かたっぱしからプレゼントをしあうアットホームな祝日だ。ひと足お先におとずれる感謝祭でも、集まった家族同士でささやかな贈りものをしたりする。
贈りもの。それはそれで心おどる楽しい風習ではあるのだが。ひとつ、気になっていることがある。ギフトラッピング、である。
アメリカ人の友人たちがあまりに贈りもの包装の仕方がうまいので、毎年感心してしまう。
手先の器用な女性ならまだしも、こちらじゃ男だって、実に手際よくギフトの箱をラッピングしてのけるのだ。それもそうだよね。彼らは、毎年毎年、飽きもせずせっせと限りない数のラッピングをこなしてきているわけだから。
そして問題は、「せっかく綺麗にラッピングされたギフトをあけるとき」。びりびり、パリパリパリ(←紙をやぶる音)。あ、あ、と私は心で声をあげる。
そんなに豪快に破らなくたって。普通、日本での贈りもの交換だと丁寧に、テープかなんか丁寧に爪ではがし、包装紙を折りたたんで……という手順が常である(ちなみに可愛い包装紙なんかだと、むろん大切にとっておく)。
しかし、こちらではわくわくはやる気持ちを表明するかのごとく、大胆にーー紙などは二度と使えない勢いでーー破いて開ける。それが戴いた相手への礼儀だという話も聞いたことがある。
そして、どうせ捨てられる運命のラッピングなら、安っぽい包装で十分…かというとそんなことはなく。
ソーホーにある私の大好きなペーパーショップ、Kate's Paperieはこの時期、ラッピンググッズを求めるひとで大賑わいだ。
何百とある色とりどりの美しい紙だけでなく、凝ったかたちの紙やメッシュや木のギフトボックス。リボンコーナーには、フランスや日本の「木馬」のリボンもきちんと取り揃えられている。
ギフトに手間隙をかけること。それは、もしかしてお花を贈るよりぜいたくなことかもね、と思ってしまう。切り花はそれでも一週間はもつけれど、ラッピングはたったの一瞬だもの。それでも相手のよろこぶ顔がみたくて、丁寧につつむ。ラッピングを破く音。それは史上最高にうれしい音かもしれない。
そんなおり、最近ひとからチョコレートを戴いた。ダウンタウンにあるとても美味しいペルギーチョコレートの店、Leonidasの小さな金色の箱にはいった詰め合わせ。
リボンはオリーブグリーン色のサテンと同系色のジョーゼットの二重でかけてある。どんぐりとピンクの花のささやかなブーケつきだ。水彩画で色々な木の実と葉っぱが描かれた包み紙。そしてそれらは、黄色に青のしゃれたロゴのついた小さな手提げ袋にちんまりおさまっている。ちっちゃなチョコの詰め合わせに、なんとまぁぜいたくな。むろん、私はそれらの全部を大切に「ラッピング類をしまう箱」にしまいこんだのだった。
ああ、こんな貧乏性の私が、大胆に戴きものの包装紙を音をたてて破る日ははたしてくるのであろうか。きっとこないな。
至福の音は、心の中だけで鳴っているのである。
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●Kate's Paperie / 561 Broadway, New York, NY / (212) 941-9816
●Leonidas / 3 Hanover Sq, New York, NY / (212)422-9600 or 485 Madison Ave. New York, NY / (212)980-2608
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●一枚の大皿 |
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| はぁぁ(←疲弊と食べすぎで、おもわずたてた溜め息声)。ただいまサンクスギビングあけのウィークエンドである。
感謝祭といえば、開拓時代のアメリカ移民たちが、収穫に感謝を捧げたことに由来するホリディだ。さかのぼること十七世紀のはじめ。食糧不足と病にくるしむ開拓移民たちに、アメリカンインディアンがとうもろこしの作付けや、狩のできる場所を伝授し、ともに野鳥や果実などをふんだんにつかった料理で、数日間にもわたる祝宴を繰りひろげたことに端を発するという。
普段はドライでそう美味しいともいえぬ七面鳥を食する習慣も、そのころの獲物に七面鳥がふくまれていたことからくるらしい。
とはいえ、すべてのものがあふれかえる現代。感謝祭は「感謝のきもち」よりは、とにかく「もう喰えん!」というほどお腹に食べ物をつめこむ食のおまつりと化しているようだ。
この日、数人の知り合いを招いてサンクスギビング・ディナーを催すことにした私と友人。が、これが予想以上の大さわぎであった。一緒に料理するアメリカ人の友は「食べ物が余ることはあっても、感謝祭に足りなくなったらそれこそ大変!」という脅迫観念にかられているゆえ、必要以上に食材を買う買う。そうして、そんな「ご馳走を供することの使命と決意にみちた」ひとびとで、ユニオンスクエアのグリーンマーケットは、いつにもました賑わいだ。
ここで私たちは、一週間前から予約してあった十ポンドもの重さのグース(=家鴨。七面鳥より味が濃くて美味しいのだ)をピックアップ。他に、詰め物に使うためのワイルドライスやリンゴやチーズ、つけあわせのヤム芋(これまた重い!)、さやえんどうをぽってり厚くしたようなシュガースナップ・ピーに芽キャベツ等をいちいち必要以上の量、買って持ち帰るのだからもう大変。あたしゃ開拓移民か!?ってな重労働ぶりである。
さらに、受難は食料調達だけではおわらない。
普段はめったに何人ものお客を招いたりしないから、こぶりの取り皿はあっても、肝心の家鴨をのせる大皿がないのである。友人が途方にくれた声でさらに叫ぶ。
「ああっ、グレイビーボートもないや!」
グレービーボートとは、焼いたお肉にかけるグレービーをいれるクリーマーみたいな形のひらたいポットのこと。「ボート」という呼び名がなんだか可愛らしいではないか。して、鶏の丸焼き用のお皿とグレービーボートを探しあぐねてのキッチングッズ・ショップ行脚は繰り広げられるのだった。
まずは、近頃ソーホーにオープンした「クレート&バレル」。今までミッドタウンにしかなかったこの店がダウンタウンにできたのは嬉しいかぎり。通りでは、店のロゴが入った真っ赤な紙袋を掲げ歩くひとのすがたも多くいて。
みな、ホリディ前に焦って買い物してる様子がありありだ。もぅお。私ふくめて、宿題締め切りはぎりぎりまでやらんタイプの人間がアメリカにもあふれているとみたぞ。
さて、一応よろしい感じの四角い大皿に目をつけたら、お次はブロードウェイ挟んでおむかいの「ポトリー&バーン」へ。ここでは、洗いざらしたようなブルーが美しいディナーセットをみつけたが、大皿だけは残念、売り切れであった。うーぬ、出遅れたとみたよ。
めげずにお次は数ブロック南に下って、カントリー調のキッチン用品店「ブロードウェイ&パンハンドラー」。ここの真っ白な大皿もなかなかよろしいが、お値段と見合わせて結局クレート&バレルに逆戻り。はぁぁ(←すでに疲弊の面持ちで)。
さて、それから丸二日間かけて料理の下準備。できあがれば、飲んで食べておしゃべりの饗宴が延々つづき、終われば、恐怖の後片付け。シンクに山積みお皿にグラスにグリル皿。
ああ、ぜったいパーティーは招くより招かれる方が気が楽だ! 毎回、宴のあとはこんな激しい後悔におそわれる。でも喉もとすぎれば、また使いたくなるんだろうな、この大皿…。
一枚のシンプルで丈夫な大皿。たのもしいパーティーの味方であり、同志である。だいじに使うから、これからもよろしくね。 |
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●Crate & Barrel / Broadway and Houston, New York, NY / (212) 308-0011 / http://www.crateandbarrel.com
●Pottery Barn / 600 Broadway New York NY / (212) 219-2420 http://www.potterybarn.com
●Broadway Panhandler / 477 Broome St New York, NY / (212) 966-3434
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