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Don't
go over $30! ニューヨークのおこづかい帳 ●●● ● |
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| 1999 September | ラテンと遠く離れた町 |
| ●今月のお買い上げ | 幽霊ブック $8.95 灯台ジグソー・パズル $5.98 ビクトリアン・カレンダー 2点で $2 ---------------------------------- 合計 $16.93 |
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| 一年間聞きこんできたライ・クーダー・プロデュースによるキューバン音楽「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が、ヴィム・ベンダースのドキュメンタリー映画になって公開された。で、早速行ってきましたん。いやー、やっぱりラテンはいいなぁ。終わった後、観客もみな熱い拍手をスクリーンに贈っていた。やっぱり血中ラテン濃度が高い人間だと、自分のことを再認識した次第。自然に、海のほうへと心も誘われるというものだ。 気分はもうハバナ。でも突発旅行には、カリブやフロリダの島々は、時間的にも予算的にもちと無理がある。ということで、なぜか思いたって、ニューヨークのお隣の州、ニュージャージーの南端に行ってきた。ケープメイという風光明媚な(らしい)土地である。着いてみるとそこは、いわゆるアメリカの正統的な観光地、という雰囲気。ビーチ沿いのボードウォークをはさんで並ぶ、ビクトリア調のアンティークな建築様式の家々。綺麗に整えられた庭木からは、小鳥のさえずりが聞こえてくる。そののんびりと平和な街並みの麗しいこと……。ひとことで言えば、熱く濃いラテンの空気とは、対極にある場所に迷い込んでしまったようなのだ。通りをそぞろ歩く観光客も、退職した老夫婦や女性のグループばかり。それもほとんど白人オンリーである。ヒップなブラックキッズにはあくびの出ちゃう場所なのかもねぇ。東洋人なんて、四日間で二組しか見かけなかったぞ。 まぁ、ビーチはビーチ、そう変わりはないよね。と浜辺に寝転び、ウォークマンで流すカリビアンミュージックで気分を盛り上げた後、街を散策。するとそこはもう、何というか。自分が後十歳若くて、ローラ・アシュレイとテディ・ベアが好きで、趣味がキルトづくりなんかだったりしたら、「いや〜ん、可愛い。どうしよう〜」の世界である。哀しいかな、おやっさんな私にはどれもあてはまらない(いや、渋い柄のキルトは結構好きなのだが、根気のない私には手が出せない)。それでも、胸の中で呟く。 「まぁ、ここに住めと言われたら、住んでもいっかな〜なんて」(←誰も頼んでないって) これが、清里あたりのペンションで、日本的情緒の中にとってつけたようなぴかぴかの「アンティークもどき」もしくは「丘アンティーク・ラバー」だったら、こっぱずかしくて住めないけどね。何しろ手作りジャムより出来たて塩辛、レースのハンカチより手ぬぐい、の人格であるからして。 しかしこのニュージャージー南部に建ち並ぶ家々。見せかけではなく、ものほんアンティーク・ビクトリアンばかりだ。軒下やポーチに施された木彫りの透かし模様など、ファンシーというより職人芸の域に達している。本格的な建築様式の持つ壮麗さは、時を経るほどに味をます。これらの家々は、修繕を加えられ、B&Bやゲストハウスとして貸し出されているところが多い。週末でも観光シーズンでもないのに、「NO VACANCY」の札がかかっている家がほとんどだ。特に、小ぎれいな家よりは、壁のペイントがはがれかけた古めかしく味のある家ほど、人気があるみたい。アメリカは、ヨーロッパと比べ物にならないほど、その歴史の浅い国。殊更、こうした「時間の染み込んだ」様式に憧れを抱くのかもしれない。 それにしても、参ったのはオミヤゲです。編集部からの「コラム用によろしくね〜」のお達しを、「はいはい、まかしとき」と気軽に請け負った私。どこにいってもくまなくスーベニアショップを見回る私は、自称お土産屋マニアなのだが。うーん、ここでもやはりいつもの定理に突き当たる。どうしてどこの観光地も同じようなものしか置いてないのだ!? 名前だけ変えたキーホルダーや、安っぽいキャンドルスタンドは日本もここも変わりない。貝細工のフクロウや小物入れなんて、ここは江ノ島!?の世界である。 そんな中、ケープメイの特徴を少しはとらえたものをようやく見つけた。クドいととるか、愛らしいととるかはその人次第のビクトリアン・グッズに(私にはこてこてすぎるぞ)、灯台グッズ。アメリカ人はどうやら灯台がお好きなようだ。各種雑貨に、カードや名前シールまで見つけたもん(そんなシールを利用するのは灯台守りくらいのもんでは?)。そして、きわめつけ!の幽霊マップ。旧い街並みにつきものの、超常現象の穴場をめぐる本だ。本の種類もやたらとある。どれも、何百年も片足の猫が住む家や、ドアがぎしぎし窓がばたんばたん、の不思議館が延々紹介されている。あまり爽やかとはいえないページをめくりながら、ひそかには決意した私。やっぱビクトリアン・ハウスには頼まれても住まないぞ。 ……と、ふと気づく。どこがラテンだ!? (追記 in 2001/1) これを書いているときには、まさかその年の暮れに本当に自分がハバナに行けるなんて、しかもブエナ・ビスタの面々に取材出来るなんて、思ってもみなかったんだよなぁ。感慨ひとしお。日本があんなにキューバ・ブームに沸くとは想像もつかなかったし。それにしても、せめてマイアミのリトル・ハバナにでも出かけていけばいいものを。やたら地味で自分のキャラクターとは似つかない場所に出かけていくとは。いつのまにか可愛いグッズをあさっている自分を思い出し、苦笑いである。でも灯台というのは、どこか惹かれる場所だ。機能もそうだが、形としても美しく完成された建物だ。ビクトリアン・ハウスは無理でも、カリブの海を見下ろす灯台に住むってのもいいなぁ。めざせ、ラテン灯台守り。 |
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