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Don't go over $30! ニューヨークのおこづかい帳 ●●● ● |
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| 1999 July | エスニックな心配性!? |
| ●今月のお買い上げ | ベジタブル・マサラ・スパイス $3.50 インディアン・クラッカー $2.25 タイ・カレー・ペースト $2 インディアン・ランチ for 2 $10 ---------------------------------- 合計 $17.75 |
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| 先日、日本の友達がメイルでこんな風に言ってきた。 「いいなー。私なら、そんなにいつも食べ歩いてたら、とっくに破産だよぉ……」 昨日はベトナム。今日はミャンマー。明日はチベットと、日々食べ歩く私を彼女はうらやんで(なかば呆れ返って)いるらしい。しかし。私だって、東京で同じことをやってたら、たちまち破産だ。日本のように自分たちの食文化とは違う「食」をスペシャルなものとして提供するのではなく、あたりまえのものとして差し出す。いろんな人種がわんさかひしめき、そのぶんだけ店もひしめくこの街だからこそできるのである。たとえば同じベトナム料理でも、ミッドタウンの高級フレンチ・ベトナミーズから、同郷人の舌を満足させようという超リーズナブルな店まで千差万別だ(もちろん私が愛用するのは後者だけどね)。そういった同郷人御用達の店は、申し訳ないくらい安い。それに、へんに洗練されていない味は、申し訳ないくらいにうまい。 そう。どういうわけか、ありがたい!っていう気分にさせられるんだよね、お気に入りのエスニック・レストランってば。たとえばイースト・ヴィレッジのインド街の派手派手しい装飾にいろどられたレストラン。カレーにアペタイザーのサモサ、デザートにチャイまでついて$4ってどういうことなの!?の激安ランチが食べられるのだ。その後は、このところめっきりトレンディになったディープなアルファベットシティのカフェでお茶する。先ほどのフル・ランチと同額のカプチーノなど啜りつつ、私は思わず考えちゃう。さっきの頭にターバン巻いたウェイターのおじさんの労働条件って、一体? レストランがぎっしり軒を連ねるヴィレッジの東6丁目。いくら熾烈なお客争奪戦に勝ち抜くためとはいえ、これだけ安い値段で提供するということは……。しかもエスニック系レストランの営業時間(=労働時間)はやたらに長い。キッチンに一日立ちっぱなしの人も多いに違いない。……彼らの儲けって?時給って?うーん。外国人街とはいえここは東京と物価の高さを競う大都会。本人はいたってのんびり見えるウェイターの兄ちゃんの時給の額が急に心配になってくる私。これじゃ消化に悪いったらない。相手にもよけいなお世話というもんであるが。 24時間営業のコリアンのデリしかり。彼らはクリスマスも元旦もかわりなくオープンしてるのだ。しかも、いつ行っても、レジに同じおばさんの顔を見かけたりすると「一体いつ寝てるわけ?」とこれもよけいな心配をしたくなる。なんだかこの街にいると、働くってことの厳しさを、正面からいつも見据えさせられる。9to5のアメリカ人なんていうけれど、私の目にはアメリカにいる外国人たちの姿のほうが、もっと浮き上がって目に飛び込んでくるのだ。友達のメキシコ人の男の子がこんなことを言っていた。彼はイリーガルでこの街にやってきて、レストランのキッチンで長時間労働をしているがとても明るく素直。 「この街には働くためにやってきたんだ。頑張って働いて働いて、お金を貯めたら、故郷に帰る。もうここには戻ってはこないと思うな」 この街を働く場所とわりきって、真面目に労働しながらも、キッチンで仲間のメキシコ人たちと楽しげにジョークをかわす彼。週末はひとり、ブロンクスのメキシカン・クラブに陽気な夜を過ごしに出かける(休みが他の友人と合わないのだ)。生活に対するたくまさがあふれてるなと思った。現状を憂いもせず、ひたすら淡々と前向き。偉いな、とは思わない。なんだかそう考えるのって自分を優位にたたせる気がする。ただ深く納得するだけだ。人生の中で、頑張ってしゃかりきに働く時期ってあってもいいんじゃないかなと。その時期を越えた人は越えない人より何かを見ているはず。こんな私も東京で、これ以上働けないってくらい働いて過ごした時期があったっけ(ただし、短い期間だったけど)。 さて、近頃の私は、もっぱら自分でエスニック料理に挑戦している。これなら、頼まれもしないのに(!)身も知らぬ他人の給料の中身など心配せず、心安らかに異国風味あふれる食事を楽しめるってもの。で、探してみるとこれがあるものなのだよ。インドからタイ、カリビアンから中近東と、本格的なスパイス&食材品屋さん。棚にずらりと並ぶ、摩訶不思議な調味料の数々。そして、どこの国にも手抜きの人間というのはいるものらしい。調理の簡単なレトルト食品も目白押しなのだ。私も試しにいろいろつくってみた。レストラン顔負け!という味もあれば、「これは一体……」という不気味な失敗に終わったものまでいろいろ。エスニック・クッキングの世界は素人にはまだまだ奥が深いと見た。 でもこの当たりかハズレかっていう賭けが、また楽しいのよね。しかもスパイスはレストランでの食事代よりさらに安い。これから$30分は買い込んで、研究するぞぉ。と、意気揚々になったところで。 ……いかん、今度は閑古鳥なくスパイス屋のおやじの給料が気になってきた。 (追記 in 2001/1) この文章を書いた頃から、ますます勤労意欲を失ってきている私(その経過は、お仕事リストにありありと……)。だがその反面、エスニック料理への探究心は失せていない。相変わらず飲食店関係の時給も気になり、人に尋ねては嫌がられている。今世紀はもうちょっと身になることを気にしたいものだが。 |
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